大判例

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東京高等裁判所 昭和44年(ラ)1038号 決定

一、ところで抗告人は、本件借地は乳牛の飼育を主たる目的とするものであり、本件各建物は単に右目的の便宜上設置されているにすぎないから、借地法の適用を受ける土地の賃貸借ではないと主張する。案ずるに本件借地上の建物中二棟はいずれも木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建居宅で、その床面積は五四・四四平方メートル(一六・四七坪)及び九四・四一平方メートル(二八・五六坪)となつており、その余の建物は木造亜鉛メツキ鋼板葺平屋建の牛舎二棟及び牛乳取扱所で、各床面積はそれぞれ二〇四・一三平方メートル(六一・七五坪)、一四三・八〇平方メートル(四三・五〇坪)、六〇・三三平方メートル(一八・二五坪)となつていて、居住の用に供されている建物と乳牛飼育に利用されている建物の比率からすると、乳牛飼育の目的に利用されている部分が広いけれども、右各建物の床面積の合計は五五七・一一平方メートル(一六八・五三坪)あつて、本件借地の全面積の四分の一近くをしめていることと、右各建物の右借地に建てられている位置関係それに相手方は本件借地に居住しながら、乳牛を飼育して生計を営んでいる事実をあわせ考えると、本件借地は単にこれら各建物の床面積の範囲のみに限定されるべきものでなく、全体として右各建物の所有を目的とするものであつて、当然借地法の適用のある土地であるということができる。牛舎及び牛乳取扱所といえども、屋根はもとより囲周障璧あることはその用法上明らかであるのみならず、これに人が出入し、そこで作業することを当然伴うものであり、現に建物登記の対象となり、もとより借地法上の建物というに妨げない。

二、鑑定委員会の意見によると、本件借地の時価(更地価格)は金五三三六万一八七五円(三・三平方メートル当り最低七万五、〇〇〇円と最高一〇万円との平均八万七五〇〇円)であるから、その七割を借地権価格とみるならば、右は金三七三五万三三一二円(円未満切捨)となるところ、相手方(亡夫勢)は昭和一四年本件借地を含む土地の借地権を建物四棟とあわせ金二四〇〇円で買受けたから、右建物の価格をいかように算定しようとも相手方が取得した借地権価格と現在における借地権価格との差額は少くとも金三七三五万円となる。そしてこれは地価の値上りに伴つて生じた借地権価格の増加分であるということになろう。すると右は借地人たる相手方が本件借地権を適法に譲渡することによつて反対の事情のない限り、これに相当する対価を取得するのが通常であると考えられるから、結局右借地権譲渡による利得とみることができる。これは一方において地価の異常な騰貴に伴い取得するものであり、他方において地主たる抗告人が土地の利用をやめる借地人から借地を回収するかわりに、その借地権の譲渡を承諾することによりその土地所有権上の制約の継続をさらに受忍することによるものであるから、右利得のすべてを借地人が独占すべきではなく、その一部を地主たる賃貸人にも還元するのが少くとも現在の借地関係における当事者間の利益の衡平を図るゆえんである。そこで賃貸人である抗告人に還元すべき額について計算するに、本件借地権は既経過期間約三二年で残存期間が一八年あるから、まず右借地権価格金三七三五万円のうち既経過分はすでに借地人において享受し終り、残存期間に相応する五〇分の一八に当る約金一三四四万円は本来借地人たる相手方の固有の利益分として控除する。次に右金三七三五万円から右金一三四四万円を控除した残額金二三九一万円中、三割に当る金七一七万三〇〇〇円を抗告人が受取るべきが相当である如く一応首肯される。しかし借地法第九条ノ二により裁判所が借地権者の申立によつて賃借権の譲渡につき賃貸人にかわつて許可を与えるのは当該譲渡についてであり、当事者間の合意による場合はかくべつ、同法の定める手続によつて譲受人がさらに右賃借権を譲渡することについてまであらかじめ承諾にかわる裁判をし、またそのための附随条件を定めることは原則としてありえないものと解すべきところ、本件借地権の譲渡を受けようとする内路建設はいつたん本件借地を譲受けた上、これに建売住宅を建てて分譲する予定であることがうかがわれるが、本件借地権の譲渡はあくまで相手方から内路建設に対するものであつて、本件は右のとおりそれの許否及びそのための附随条件を定めるものであり、右分譲に伴う内路建設からの再度の借地権譲渡が当然本裁判の結果許されるものではない。右分譲を抗告人が承諾するか否はあらためてそのさいに決すれば足り、抗告人がこれを承諾しないときは再びその許否が裁判上問題となる可能性があり、そのさい譲渡を許可すべきものとされる時は、本件附随条件が事実上考慮されることはあつても当該分譲そのものについてさらにその附随条件が考慮され、おそらく抗告人はあらためてさらに何ほどかの金員を徴収する可能性があることとなろう。譲受人たる内路建設がこれをきらつて譲受をあきらめればすなわち止む。かようなことを考慮すると、相手方が本件借地権の譲渡に当り抗告人に支払うべき金額は前記七一七万余円より相当減額されてしかるべきであり、結局原決定の限度である金五二六万八九五〇円とするのが相当である。

(浅沼 岡本 田畑)

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